*二人のためのお題 Type : 1*
■微睡む■
「ふかふかのお布団〜」
取り込んだばかりの布団にぼふっと倒れこんで、望美はうっとりと目を閉じた。
(あ〜、景時さんと同じ、お日様の匂い〜)
景時が買い出しに出かけ、気を利かせた望美は布団を取り入れておくことにしたのだった。取り入れるまでが洗濯です、というわけで、まあ、景時は洗濯物を取り入れたり、布団を取り入れたり……も楽しみにしているわけではあるが、かといってあれもこれも家事をお任せしてしまうのは申し訳なく。偶にはこうして景時の楽しみを奪うことを旨としている望美である。
しかし、取り入れたまでは良かったが、その上に倒れこんでしまったら今度はその心地よさに起きたくなくなってしまった。景時が帰ってきたときのために、お茶でも……と思ったのだが布団の魅力は抗いがたい。もう少し、もう少しだけと思ううちに、とろとろと微睡み始めてしまった。
かたん、と音がしたのは気付いたが、起き上がるにはもうちょっと眠りに入ってしまっていた。ぱたぱたという足音は景時のものだ。なんだか軽やかに踊っているかのような独特のリズムがある。
「望美ちゃーん?」
はーい、と応えたいような、見つけて欲しいような気がして望美はそのままうとうとと布団でまどろんでいる。かしゃかしゃ、という音は多分買ってきた品物をテーブルに置いた音。ぱたん、ぱたんと音がしているのは冷蔵庫にそれを閉まっているのだろう。その景時の姿が目に浮かぶようだった。それからまたぱたぱたと足音がして、やがて望美が布団に埋もれている部屋の前でその音が止んだ。
「望美ちゃ〜ん?」
控えめな呼びかけ。足音はしなかったけれど、だんだん近づいてくる気配は感じた。
「の、ぞ、み、ちゃん?」
髪に息がかかるほど間近くそう囁かれる。耳元がくすぐったいけれど、何故か望美はそれを堪えた。本当に自分が半分眠っているのか、あるいは寝たふりをしているのか良くわからなくなっていて。でも、とても心地よいのだけは確かだった。暖かい布団はふかふか柔らかくて寝心地が良くて、景時がすぐ傍に居てくれるのがわかって。しばらくして、景時が離れていくのがわかった。ぱたぱた、と足音が遠ざかってそれから、ぱたん、と冷蔵庫が開く音がして。望美が起きようかな、と思ったとき、また景時がこちらの部屋にやってくる足音がした。そして、望美を起こさないようにだろうそっと足音を立てないように景時が近づいてくる気配がして。そして、望美の隣がゆっくり沈んでいく。景時が布団に横たわったのだとわかった。
ふわぁ〜〜、と景時のあくびが聞こえる。
「あ〜、うんうん、ふかふか布団は気持ちよいよね〜」
満足そうな景時の声がして。さらりと望美は景時の指が自分の髪をさらっていくのを感じた。
「起きたら、望美ちゃんの好きなプリンがあるからね」
ああ、なんて幸せなんだろ。望美はそんなふわふわした心地で眠りの海に漂っていた。
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